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保存期慢性腎臓病(保存期CKD)の管理
-現在の生活レベルを維持するために-
腎機能障害の進行は抑えることができます
- ”慢性腎臓病(CKD)”は、腎臓の働きに障害のあるさまざまな病気の総称です。
- 腎臓の働きが低下、すなわち腎機能障害が進行して腎臓の機能が果たせなくなった状態を“腎不全”と呼びます。
- 腎不全の状態となると、血液透析をはじめとした腎代替療法が必要となります。
- CKDは腎不全への進行ばかりでなく、動脈硬化が進行して心血管系疾患の発症や死亡の危険性も高くなります。
- 適切な管理を行って、腎機能障害の進行を抑制すると、心血管系疾患の発症や死亡の危険性も減らすことができます。
- したがって、治療の第一の目標は腎機能障害の進行を抑えることです。
- 適切な管理により腎機能障害の進行は抑えることができます。
腎機能障害の進行を抑えるには
- 血圧の適正化、腎臓に負担を与える食事内容の制限、適切な運動が最も大切です。
- 食事療法は減塩、タンパク摂取制限、そして十分なカロリー摂取が大切です。
- 血圧は塩分制限と降圧薬の使用により、適正な値に維持します。
- 肥満は腎機能の悪化因子ですので、適正な体重を保つ必要があります。
- 喫煙は腎機能悪化を促進しますので、喫煙者は禁煙が強く勧められます。
- 腎臓を悪くした元々の原因疾患や動脈硬化を悪化させるような併存疾患、例えば糖尿病、高血圧、脂質異常症などがある場合には、これらもしっかりと管理することが大切です。
食事療法について
- 腎臓の機能が低下するにつれて、食塩、カリウム、リンなどの排泄が十分でなくなり、体内に蓄積することで、悪影響をおよぼします。
- 食塩は腎機能障害進行因子であり、その制限は血圧管理のためにも重要です。
- 食塩は一日6g以下、可能であればできるだけ少なくすることが勧められます。
- 加工食品や外食の食品には多くの食塩が含まれていますので、注意が必要です。
- タンパク質は体内で代謝されると腎臓や身体に悪影響を及ぼすゴミや酸が作られます。
- 腎機能が高度に悪化するとこれらが蓄積して尿毒症と呼ばれる吐き気、食欲低下、全身倦怠感などの症状が出現します。
- タンパク制限は腎機能の悪化速度を遅らせることが知られています。
- また、タンパク制限をすると自然にタンパクに多く含まれるカリウムやリンの制限にもなります。
- タンパク制限は腎機能障害の程度にもよりますが、体重1キロあたり一日0.6g以下にします。
- 状態によってはさらに強化したタンパク制限が有効の場合もあります。
- 高度タンパク制限を行う際には食事内容を記録することが大切です。
- タンパク制限を行う際には、エネルギー不足により体内のタンパク、すなわち筋肉が壊されないように十分なカロリーを摂取する必要があります。
- エネルギー摂取量は肥満が無い場合には体重1キロあたり一日35Kcal以上の摂取が勧められます。
- リンの過剰摂取は腎機能悪化と関連するばかりでなく、動脈硬化を進行させます。
- リンは食品添加物や飲料食品に多く含まれており、含まれるリンは吸収されやすい無機リンです。
- リン制限には自然な食品を料理して摂取することが大切です。
- カリウムは種々の食品に含まれており、制限は難しいです。
- タンパク制限を充分行うことでカリウム制限も同時に行われることになるため、野菜や果物を摂取することも可能となります。
- 過度の飲酒は腎機能障害を悪化させますので、避けてください。
運動療法について
- 腎機能障害が進行するにつれて、筋力が低下することが知られています。
- 腎機能障害があっても適切な運動をすることで筋力が増加することが知られています。
- 毎日の歩行などに加えて、スクワットなどのストレス運動を状態に合わせて行っていくことが大切です。
- 運動内容について担当医および理学療法士にお尋ねください。
適切な管理のために患者さま自身に行って頂きたいこと
- より適切な管理を行うために、血圧測定、体重測定、通院日前の蓄尿など、いくつかご自身で行って頂きたい事柄があります。
- 家庭血圧は病院での血圧とともに重要です。
- 家庭血圧は起床時(排尿後)そして就寝時に測定し、血圧帳に記録してください。
- 体重は栄養状態や体液量の変化を知る指標となります。
- 週1回は測定し、血圧帳に記入してください。
- 普通の人は食塩やタンパク質を毎日どれくらい摂取しているのかわかりません。
- 蓄尿検査では、食塩、タンパク、カリウム、リンなどの摂取量が分かります。
- 管理を適切に行うために、来院の前の都合の良い日に24時間の尿を全て集めて、量を量り、そして良く攪拌してその一部を持参してください。
治療効果の指標
- 治療効果は長期的には血清クレアチニンの数値の推移、そして血清クレアチニンから計算される腎機能の指標である推算糸球体濾過量(eGFR)の経過から判断していきます。
- タンパク尿のみられる方では、これを一日換算量で0.5g以下を目標に管理します。
- 血圧は130/80未満、できるだけ悪影響のない低値を目標とします。
- タンパク制限による栄養状態の悪化には注意が必要です。
総合的な管理による現在の生活を維持するために
- 治療の目標は、腎機能障害の進行を抑えるとともに、できるだけ長く現在の生活レベルを維持することも大切となります。
- 患者さま自身で行うこともたくさんありますが、食事療法や運動療法など、医師ばかりでなく、看護師、管理栄養士、理学療法士などの多数のメディカルスタッフと共同して力を合わせ、長期間継続していくことが大切です。